第1回公演 「凱旋門」 あらすじ

●あらすじ●

 1938年晩秋。第2次世界大戦前夜の、混沌としたパリ。 

 深夜、戦争の影に怯えながらも人々はシャンソンを歌い、つかの間の安らぎを得ている。 

と、ゲシュタポの隊長ハーケ大佐と、秘密諜報員マルクスが、反ナチス狩りを行う。叫ぶ人々の逃走を素早く手配するのはオットーだ。

その光景を見た元ロシア士官ボリスと、無国籍ホテルを経営するフランソワが、戦争におびえる世相を憂う。

私立病院長ヴェーベルと外科医ラヴィックもそれぞれの立場からパリの現状を見つめ、語る。

そしてラヴィックは、生き方に迷う女優のジョアンを救う。

  

 一方、オテル・アンテルナショナールでは、パスポートを持たない外国人宿泊者を積極的に受け入れ、警察の手から守ろうととしている。

協力者のボリスはロシア人だが、キャバレーのドアマンとして、冷静に社会を見つめる。

不法侵入者として心を閉ざすラヴィックは、売春宿の経営者ローランドやスペイン人のハイメユリアたちとの触れ合い、ジョアンとの出会いから、

自ら忘れようとしていた大切なものを思い出す。

 

 やがてジョアンが、歌手として脚光を浴び始める頃、ラヴィックを取り巻く状況に変化が起きる。

恐怖政治を行うナチスドイツの魔手が、本格的にパリへ及び始めたのだ。そのことは、かってベルリンで残虐な拷問を受けたラヴィックに、復讐の機会をもたらすことになる。

 

 時代に翻弄されながら、浮き草のようにあてどなく生きる人々。

それでも凱旋門は、毅然としてそびえ立っている。その目に映るのはパリの幸せか、それとも悲劇か…。